黒潮丸のガーデン読書録

 

書名:日本庭園を愉しむ 著者:田中昭三 出版社:実業之日本社
発行年月:02・01 価格:1600 頁数:285
読んだ理由:
題名に惹かれた
 
読んだ日:0207  
内容:
<第1章:庭園が変わる・建築が変わる><第2章:日本庭園の源流を探る><第3章:庭園史を彩る人物物語><第4章:施主の夢・造り手の腕><第5章:景観を左右する道具考><第6章:比較・日本の庭と外国の庭>

この中で面白かったのは第3章と第4章である。つまり人間に関わる部分である。
著者は学者でなく歴史家ではなく実作者でなく、どちらかというとジャーナリストの系譜から庭園の研究家となった人のようである。
人間を語る部分で面白いのはそのせいか。

一方、「平安時代末期、日本の庭園史上もっとも大きな変化が現れる。浄土式庭園の誕生である。」として末法思想に対抗する僧源信の教えに多くの貴族が飛びついて、自分の邸宅やなじみの寺院に極楽浄土を築こうとした、という。(P26)
浄土式庭園の始まりを奈良時代と教えられていた私にとってにわかに信じ難い。
また、「日本に禅が伝わったのは、じつは奈良時代以前のことである。」(P196)と説明なしにいきなり言われても困るのである。
このように歴史記述は不親切であると思った。

第6章。1740年代のイギリスの自然風景式庭園に廃墟の造景が隆盛を極めた、という。(P271)そして廃墟は洞窟と同義という。
そこから論を延ばして、茶室こそ日本庭園における洞窟だ、という。
何を言いたいのか判らない。

全体として。読みやすい。庭園史に関するエピソードに強くなる。


 

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