黒潮丸のガーデン読書録

 

書名:英国式庭園 著者:中尾真理 出版社:講談社選書メチエ
発行年月:99・5 価格:1600 頁数:268
読んだ理由: 「イングリッシュガーデン」についてもう少しはっきりした概念を持ちたかったから
 
読んだ日:02・11 推薦度:☆☆☆
内容:
著者は49年生まれの奈良女子大の英文学の先生だが、これだけ本格的に<英国式庭園>の本が書けるとは大したことだ。
植物を育てる園芸ではなく、石の配置など造園土木ではない、<庭園>に関する学会があったらそちらに所属すべき人だろう。

どういう勉強をしたのだろう。イギリスには庭園の歴史に関する書籍・資料はたくさんあるのだろうが、日本にそういうまとまった研究の蓄積があるとは思えない。
とにかくよく調べ、まとめている。しかも専門外の立場で。
感服した。

一応ローマ時代から説き起こし歴史を追っているが、どこかで読んだような通り一遍の記述ではなく、目配り広く、社会背景にも触れつつ、個別の事象へのコメントも的確である。

私が大きく裨益されたのは18世紀のランスロット・ブラウンに関する記述である。<イングリッシュ・ガーデン>を代表するような大名題であるが、彼の<風景式庭園>がどのような時代背景のもとに生まれ、どこにどう作られ、どのように変遷していったか、教えてもらった。

今後私は<イングリッシュ・ガーデン>という言葉を聞いても、それがどういうイングリッシュ・ガーデンであるか身構えて確かめないと気軽にはその話題に入って行けないであろう。
この本はそれほどのインパクトを私に与えた。

お薦めする。
 

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