黒潮丸のガーデン読書録

 

書名:
イングリッシュガーデンの源流−ミス・ジーキルの花の庭
著者:宮前保子 出版社:学芸出版社
発行年月:2001/11 価格:2200円 頁数:190
読んだ理由:
イングリッシュガーデンという言葉とジーキルの名が密接不可分であることは知っていたが、ジーキルについて殆ど知らなかったので是非読みたかった。
また彼女の色彩計画について知りたかった。
読んだ日:2002/3
内容:
著者の宮前保子は1951年生れ、京大農学部卒の農学博士で現在京都造形芸術大学助教授である。

目次
1、イギリス庭園の流れとガーデンデザイナー・ジーキル
2、ジーキルの生い立ちと時代背景
3、ジーキルと二人の協力者
4、ジーキルのガーデンデザイン
5、ジーキルのカラープラニング
6、日本のガーデンデザインとジーキル

この本の魅力は1章と2章である。イングリッシュガーデンの歴史と定義をこれほど判り易く明確に教えてもらったことはなかった。さすが大学教授という感じがする。

ジーキルについての個人史も詳しい。何か種本があるのであろうが(もしそうではなくすべて原典からの研究だとしたらお詫びしなければならないが)、よく彼女の生涯を追っている。それにしてもジーキルがジョン・ラスキンやウイリアム・モリスと一緒に新しい芸術運動に関わった女性とは知らなかった。

歴史の部分ではなくガーデンデザインの部分では宮前氏の記述は精彩を欠くように思う。実作者ではないためか。
ジーキルの色彩理論の部分も、これは僕のレベルが低いためすんなりと理解し難いが、宮前氏の筆も歴史記述に及ばないのであろう。

中にジーキルの著書から「マンステッドウッドのフラワーボーダーガーデン」の植栽図を日本語にして再現しているが、これは大変な労作である。これあって、並みの本と一線を画すと思う。
にわかには理解出来ないが、じっくり研究してみたい。

それにしてもこの図は季節の変化を織り込んで非常に数多くの植物を1枚の植栽図にまとめているが、春の庭、夏の庭、秋の庭と書き分けないのはそこにイギリスの季節の特徴があるのだろうか。

 

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