黒潮丸の「トピアリー 大研究」

付ーモザイカルチャー研究

浜松モザイカルチャー世界博2009


今日、開催3日目の「浜松立体花博」(浜松モザイカルチャー世界博2009)に行ってきました。


詳しいご報告はまたにしますが、一番素敵だったカナダ・モントリオール市出品の馬の像の写真をご披露します。
モントリオールは世界モザイカルチャー協会の本部があるところです。さすがです。


 

構内配置

 浜松フラワーパークは入口ゲートを入ると、大きな競技場・スタジアムの最上階席のような場所に出る。
 目の前からすぐに下がって底面のフィールド・トラックの部分が広い噴水池になっている。
 向こう側の丘の上にクリスタルパレス(温室)があり、左奥にローズガーデンがある。

 実はこの一望できる景観の中にモザイカルチャー博の展示物はほとんど無い。
 正面のクリスタルパレスと噴水池の間の斜面が市内の小中学生が植えたカーペット花壇になっているが、まだ暑い時期とて見栄えがしなかった。



 このサンクンガーデン(沈床ガーデン)の周囲一帯がサクラ、ツツジ、ウメなどの林や、動物園、水鳥の池など周遊コースになっていて、そこにゆったりとモザイカルチャーの出展作品が配置されている。そこは入口あたりからは見えない。
 出展は世界や国内の各市や企業(少数)で、約90を数える。ちょっと歩きでがあるが、林間コースの散策は心地よい。

 しかしそれらの出展を受けるばかりで、「浜松モザイカルチャー博覧会2009 MIH2009」としての独自の企画や展示物は無い。「博覧会」としてのシンボルがない。
 そのためか、モザイカルチャーとは何か?、何を見せられるのか?の疑問が歩いている間ずっと付きまとった。




展示作品

1.モントリオール市(カナダ) 「木を植えた男」
  とっつきのコーナーにあるこの作品が何といっても一番だ。不屈の羊飼いが1人で不毛の土地を命溢れる緑の森に蘇らせた物語を描いている。男の前には8頭の大きな羊が佇んでいる。後ろで走る2頭の馬は自由と命の復活を表しているという。躍動感が素晴らしい。


  モントリオール市は世界モザイカルチャー協会(MIH)の本部のある土地である。さすがである。
  これまでのMIHの各大会の作品を通じて(ネットで写真を見られる)、最高の作品ではないだろうか。
  (実は私が作庭を依頼されていた○○牧場のアイキャッチャーに馬のトピアリーを提案したことがあるが、これほどのイメージはなかったし、勿論私に作れるわけもない。)

    



2.その他
  90もあるからそれぞれだが、私の目に留まったのはこんなところか。

瀋陽市-祈福門 新潟市−大凧合戦
相模原市−このボールはトレニアのコンテナ造り 牧の原市−この空港、いつまで保つか?
浜松市−白砂青松 広島市−カモの里帰り
  スリランカ−涅槃仏
静岡県−紅雲の雪景富士 高陽市−サムル遊び

帰途に見かけた浜松駅の壁面緑化  モザイカルチャーではないが素晴らしかった



3.全体として
  どれも「モザイカルチャー」の定義(次項で紹介)に則った作品であって、私が期待した<花壇の立体化>とではないのであった。



モザイカルチャーの定義 (MIH2009 公式ホームページより)
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モザイカルチャーとは絵画や彫刻などの芸術と草本植物の葉や花の魅力を生かす造園や園芸の環境創造技術が融合した全く新しい文化創造のジャンルです。
あらかじめ構築された金属フレームの像の表層部に多種、多彩、多様な生きた草本をデザイン通りに植え込んで作る人、動物、風景などの像及び群像と二次元の緑花床で景観を創造する「緑花像景アート」と定義します。

19世紀にはカーペットベディングとモザイカルチャーは同義語でした。その後20世紀後半にカナダのケベック州を中心に公園などの広大な芝生の景観に色彩豊かな草本を立体的にアレンジし、魅力を添える技法として発展しました。
さらに世紀末に金属フレームで作った原型の像の表層に根の着いた草本を植え込み、花や葉の色彩美を生かした大型の像で公園や広場などの都市景観を演出する装景技法として定着しました。

ボックスウッドなどの木本を長期間にわたって刈り込んで仕立て上げるトピアリー、平面的な基盤に草花を挿入するだけのフラワーボード、立体的植木鉢設置装置などで作る立体装飾などはモザイカルチャーではありません。
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「浜名湖立体花博」と「浜松モザイカルチャー世界博2009」
この博覧会は昨年春発表された頃はもっぱら「浜松モザイカルチャー世界博2009」と表現されていた。
しかしいつの頃からか「浜名湖立体花博」として宣伝されるようになった。
察するに<モザイカルチャーでは何か判らない><理解を得られない>。<判りやすい立体花博にしよう>ということだろう。



「立体花博」と「立体花壇」
私は<花壇の立体化><庭の立体化>の参考になるだろうと期待して見に行ったのだが、<モザイカルチャー>はそういう表現技法の芸術であって、花壇の立体化とは次元の違うものであった。

 

 

提言

もし私が「浜松立体花博」のプロデユーサーだったら、現状に加えてこんな企画をたてたかった。

1.シンボルを建てる。
  一目で「浜松立体花博」もしくは「浜名湖モザイカルチャー博2009」と判るシンボリックな像を建てたかった。
  例えばビルバオ-グッゲンハイム美術館の前にある「パピー」の像、あるいは英国サマセットの「ウイローマン」のような。
  そのイメージをHPにも、パンフレットにも、入場券にも、全部に使用する。浜松駅前にはそのミニチュアを立てる。

  何を建てるか、誰が作るか、大々的にコンペにする。

         



2.事務局ブース(展示場)でモザイカルチャーの説明をする。
  このあまりに馴染みのない「モザイカルチャー」の用語を採用するなら、まず入口のブースで説明すべきだろう。
  ・モザイカルチャーの歴史
  ・今回の出展団体
  ・モザイカルチャーの制作方法

3.作品に署名を入れる。
  どの出展物にも作者の署名がない。これでは困る。
  例えば私は静岡県民だが、静岡県出展の「紅雲の雪景富士」に関心を持った。ところがこれを誰がデザインして、どういう経緯で県の出品作と決まり、どう制作したかが判らない。
  もし作者が判っていればその人の講演を聞きに行ったり、他の作品を見たりすることが出来る。
  名前があってこそのモザイカルチャーの普及なのだ。
  「パピー」はジェフ・クーンズ、「ウイローマン」はセレナ・デラ・ヘイの名前とともに存在する。

  すべての出展作品に作者の署名を入れたい。

4.国内作家の招待
  わが国の庭園立体造形の作家を招待して制作してもらいたかった。
  1)杉浦章介氏
    安城デンパークの「花牛」を作った杉浦章介氏の作品を並べたかった。
    デンパークの「花牛」や「孔雀」は、「木を植えた男」以外の全出展作品を圧倒するだろう。
  2)石原和幸氏
    英国チェルシーフラワーショーで2006、7、8年と3年連続金賞を受賞した石原氏の「緑の壁」を見たかった。それをモザイカルチャーと比べて見たかった。

         



  その他多くの造形作家がいるに違いない。菊人形や盆栽など和の世界にも貴重な技術の蓄積があるだろう。
  必ずしも「モザイカルチャー」の旗を揚げていなくても招待する、その幅広さがモザイカルチャーを発展させる。
 

(2009・9・21)

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